Stories No.5 ~身体の常識がアップデートされるとき~

Stories No.5

私が日本で働いていたときのお客さん。
 
私が働いていた会社は、新規の方には必ずお客様シートというものに、名前や身体の状態を書いて頂くことになっていました。それを把握した上でカウンセリングを行い、施術を行っていました。また、ポイントカードも同時にその日から発行し、会員になって頂くシステムでした。

キャンペーン中だったので、通常の値段の半額、しかも新規登録料もかからないのでお得に、施術を受けることができたときのはなし。

ひとりの新規の女性が週末の忙しい時間帯にふらっと入ってきました。

 
 
: 新規の方にはこちらをご記入頂いています。枠の中を書いて頂くようお願いいたします。
 
彼女: ただのお試しなので、通うつもりはないのでけっこうです。
 
: 身体の状態を把握したいので、お名前だけでも書いて頂けますか?
 
彼女: けっこうです。

ちょっとカリカリした感じでした。
 
今まで、シートを書かない方はいなかったので、どうしたらいいのかわからなかったのもあり、店長に確認を取り、お客様シートなしで、そのまま私が彼女を担当する形になりました。

肩甲骨周りのコリ、首のコリが気になっているとだけ伝えてくれたので、そこを集中して施術しました。

すると、施術が終わってから、彼女は突然. . . 
会員になります!
回数券も次回買います!
と、態度が一変!!
 
そんなふうに彼女が思ってくれたことは、私は素直に嬉しかったし、何がそうさせたのだろう?とちょっと不思議でした。その後、定期的に通ってくれて、たくさんお話もしてくれるようになり、痒い所に手が届く施術だとおっしゃってくれました。

これはアムステルダムのサロンで働いていた時に起きたこと☟

私自身も身体の不調をたくさん抱えていた身なので、私は自分自身がやって欲しいな、と思うところを施術の中に組み込んでいます。
普段から自分自身の身体感覚を研ぎ澄ませることが大事であり、その感覚がお客さんとマッチするのか否か、筋肉の動きや呼吸の動きを指の感覚でしっかりキャッチしながら、施術をしています
 
 
お客さんに施術後、日に日に良くなっていくような感覚があるのならば、自分の身体感覚は間違っていないのかな、と思えるし、セラピストとして、まずは自分自身の身体を大事にすることと、感覚を研ぎ澄ませておくこと、そしてそれを保つことがいかに大事かを思い知らされます。

 
会社に勤めていたころは、一緒に働く上司、ましては店長会で一緒になる他の店舗の店長の方々が、休憩中にこぞってタバコを吸いにいく光景を見ると、身体を扱う職業に従事するものとして、違和感しか感じなかったのを思い出します。
別に本人の自由なのですが、健康を語る身として、お客さんに健康を提供していく身としてどうなんだろうというモヤモヤは拭えなかった. . . 
以前はヘビースモーカーで辞めた人がタバコを吸っている人を批判するのも私には滑稽に見えてしまいます。
なぜなら私は吸ったことがないから。
こんなことを思うのは自分は変わっているからだろうと、思うようにしています。
 
 
 
たかがマッサージ
 
日常生活で別に必要不可欠なことではありませんし、なくても何の支障もなく、普通に生きていけます。
余裕のある人が行くところ、という認識でもあるのかもしれません。
ただ、自分自身のことは意外にわからないことが多く、身体が非常に凝り固まっていたり、疲れていることすらわからなくなってしまっている方もいます。身体を触られることによって自覚できることもあるのです。
 
彼女のように、お試しで来て、何も期待していなかったけれど、何か自分の深い部分、琴線や魂に触れたときに起こる、今までの自分の中の常識が覆るような体験が、今後の人生に変化を起こさせるのだろうと思います。これはマッサージに限らずね。

 
されどマッサージ

 
忘れ去られつつある、触れ合うこと、触れることで癒やされること、手の持つパワー、ハグの持つパワーをまた思い出せるように私は今日もセラピストとして生きています。
 
 
 
Tot ziens !